救急現場で意識すべき指標「CCF」とは?胸骨圧迫の質を高めるポイント
救急外来や病棟急変時、心停止患者に対して真っ先に行うことといえば「胸骨圧迫」です。BLS(一次救命処置)の基本中の基本ですが、実際の現場ではこの「基本」の質を維持するのが意外と難しいものです。
今回は、胸骨圧迫の質を客観的に評価する指標「CCF(Chest Compression Fraction)」について解説します。
胸骨圧迫の基本
まずは基本の確認です。胸骨圧迫は「強く、速く、絶え間なく」行う必要があります。
- 強さ: 成人の場合、5〜6cm沈む深さで。
- 速さ: 1分間に100〜120回。(125回を超えると蘇生率が下がる報告あり)
- リコイル: 圧迫解除もしっかり行い、胸壁を元の位置に戻すこと。
- 絶え間なく: 中断を最小限にする。
新たな指標「CCF」とは?
「胸骨圧迫の中断は10秒以内」という目安は有名ですが、それだけでは不十分かもしれません。そこで意識したいのがCCF(Chest Compression Fraction:胸骨圧迫時間比率)です。
CCFとは?
蘇生処置を行っている時間のうち、実際に胸骨圧迫を行っている時間の割合のこと。
例:10分間のCPR中、実際に胸を押していた時間が7分なら、CCFは70%です。
「CPR中はほぼずっと押しているのでは?」と思うかもしれませんが、現場では以下のような理由で意外と時間が削られています。
- 波形・脈拍の確認
- 除細動(充電〜ショック)の手順
- 気管挿管の手技中
- 胸骨圧迫担当者の交代
心停止中は血流が止まっています。たった10秒の中断でも、心臓にとってのダメージは深刻です。
CCFの目標値
では、CCFは何%を目指すべきでしょうか?
- 結論: 少なくとも60%以上(できれば80%以上が望ましいかもしれない)
高いCCFを維持することは、神経学的予後の改善に関連するという報告があります。ただし、CCFを上げることだけに固執して、原因検索や必要な処置がおろそかになってはいけません。
とは言っても、原則として、特殊な状況以外ではCCFを落とさないよう心がけましょう。
CCFを高める(中断時間を減らす)ための工夫
具体的にどうすれば中断時間を短縮できるか、3つの場面で解説します。
1. 電気ショック
パドルやパッドの準備には時間がかかります。
- 事前のパッド装着: 一度ショックを行ったらパッドを貼り、次回以降の時間短縮を図る。
- ホバリング: ショック時、安全確保で離れる際も、手を組んで胸の上で待機し、ショック直後に即再開できるようにする。※不慣れな場合は無理して行わないでください
2. 気管挿管
- 圧迫継続が理想: 難易度が高くない限り、圧迫したまま挿管します。
- 中断する場合: 喉頭鏡で声帯を確認し、チューブを通す数秒間のみに限定します。チーム内でのコミュニーケーション、声かけが重要です。
3. 胸骨圧迫の交代
- 事前決定: 次に誰が押すかを決めておきます。
- タイミング: 波形確認など、必然的に中断するタイミングで交代するのがベストです。
- 早めの交代: 疲労による質の低下を防ぐため、遠慮なく交代を申し出ましょう。
まとめ
- CCF(胸骨圧迫時間比率)は最低60%、できれば80%以上も目指すとベターかもしれない
- 除細動、気管挿管、交代の手順をスムーズに行い、中断時間を最小限にする。
- 「絶え間ない胸骨圧迫」の質にこだわることで、救命率は変わります。
明日からの臨床で、ぜひ「今はCCF何%くらいかな?」と意識してみてください。
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現役の救急科専門医として救急診療にあたる傍ら、メディカルクリエイティブを追求するMeroselica Creative Agencyを主宰。
「医学を、もっと身近に、もっと面白く」をミッションに掲げ、YouTubeチャンネル『メロゼリカ【救急】』では一般向けに、『メロゼリカ【専門】』では救急ビギナー向けに、現役専門医の視点から情報を発信。さらに『メロゼリカ【遊戯】』では、医療×エンターテインメントの新たな可能性を模索している。
ICLSなどのリアルイベントも精力的に展開し、正確な医学知識と独創的な視点を融合させた、質の高いメディカルコンテンツを提供し続けている。
イラストはメロゼリカ【救急】でお馴染みの医学ネズミ・マイスー先生